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強烈なテンポの音楽に合わせて、深く速い呼吸を繰り返す。手足がしびれる。抑えていた感情があふれ出し、それにつられて体が動き出す。瞑想的なヴィジョンを見ることもある。呼吸法、音楽、ボディワークを組み合わせたセラピーがホロトロピック・ブレスワークで、無意識の活性化が促される。「ホロトロピック」とはギリシア語で「全体性の」とか「全体を含む」といった意味。
アメリカ在住の精神科医、スタニスラフ・グロフが開発した。トランスパーソナル心理学では、表面的な意識だけでは人間の精神世界はとらえきれないとして無意識の世界まで含めた精神世界の必要性を説く。それまでの心理学との違いは、無意識の世界を非常に広くとらえている点で、神秘体験、悟り、魂のレベルが重要な役割を果たしている。この意味での無意識に癒しや変容を握る鍵が隠されているとしている。
●東洋に伝わる呼吸法を取り入れた
グロフは最初、無意識の世界を引き出すのに向精神性物質LSDを使った。チェコのプラハで心理療法の臨床研究をしていたが、後にアメリカにわたり研究を続けた。しかし、LSDの使用が法律的に禁止されたため、ドラッグを使わない方法を開発せざるをえなかった。
この時注目されたのが、東洋の瞑想、ヨガ、チベット仏教などの精神修行法や、宗教的儀式の作法。これらは激しい呼吸や呼吸停止など、何らかの呼吸法と音楽によって意識に影響を及ぼすものだった。こうした技法が取り入れられ、ホロトロピック・ブレスワークにつながった。ホロトロピック・ブレスワークで用いる深く速い呼吸は、血液中の酸素と二酸化炭素の量を変化させ、アルカリ性の増加やカルシウムイオンの減少を引き起こす。こうしたことが脳に何らかの影響を与えるといわれている。
実際にはどう行なわれるのだろうか。
セッションは複数で行なう。たいてい、インストラクター1人とアシスタントが数人。始める前にペアを組み、一方がワークをしている間、片方がサポートする。というのもタガがはずれたように感情が出てくると、自然に体が動き運動量が増すケースもあり、行動を見守る必要がある。またワークは長時間に及ぶので飲食、寒さ熱さの調節などさまざまな世話も要求される。ワークは何回かに分かれ、1回が4〜5時間かかるため、セッションは午前中から深夜までかかることもある。
布団にシーツを敷く。毛布やタオルケット、座布団からティッシュ、段ボールなどが用意される。メガネや時計、アクセサリーははずし、動きやすい服装になる。布団に横たわり、音楽に合わせて深く速い呼吸を始める。
激しく呼吸すると手足がしびれ、引きつったようになることもあるが、これは心配することではなく、呼吸法が成功している証拠でもある。時間が経てば筋肉の緊張は取れる。最初の1時間ほどは意識的に呼吸するように指導される。呼吸をしながら、手足をばたつかせる人もいれば、歩き回る人、静かに横になっている人もいる。叫んだり、話したり、思い思いの行動で1〜2時間は雑然とするが、時間が経つとほとんどの人が静かに横たわっている。ワークを終えたあとはボディワーク。そのほか、体験を絵にして自分を振り返る場合もある。
●意識の3つの領域
こうした中で、人は何を体験しているのだろうか。これには大きく分けて3つのレベルがあるという。
まず、生まれてから今までの自伝的領域。認識していなかった感情の痛みや、解決のついていない問題が浮上してくるケースで、精神的に喜怒哀楽が出るだけでなく、肉体的な痛み、緊張として表出することもある。
次は出産時の体験からくる分娩前後の領域。胎児だったとき、親が話したことを聞いていて受けた精神的影響や、産道を通ったときの肉体的痛みなどを体験するコースだ。
さらに超個のトランスパーソナルな領域。宇宙との一体感、前世体験、幽体離脱など霊的次元の体験がそれだ。
これら3つはどれから起こるかわからないし、最初は何も感じないこともあるようだ。ワークを続けると段階が変わり、内容も変化していく。こうした深い領域での体験が精神に与える効果は計り知れないようだ。 |
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