ブリージング・セラピー(体験談)

最初に円環呼吸を体験したとき、なんてラクな呼吸の仕方なんだろうと思った。というのは、以前、別のブリージングのワークに参加したことがあり、そのときの呼吸の仕方が、あまりに強烈で、ひどい吐き気と頭痛、背中の痛みで、このやり方は二度とやる気になれないと思っていたからだ。円環呼吸と聞いたときには、今度は大丈夫かなという不安が多少あったが、ヒーリングというキャッチフレーズにひかれて、出てみた。
空中に円を描くように吸う息を吐く息につなげていって、とぎれることない呼吸を何分間か（15分から1時間）続けていく。そのうち、膝下から足先にかけてビリビリしびれ、手もしびれと硬直がおきて、指は曲がったままになる。でも、かまわず呼吸を続けていると、胸の中に悲しみや怒り、さみしさ、くやしさなど、次々とわき上がってくる。今まで40年以上の人生で、体の中へ押さえ込んでいたさまざまな感情が果てしもなく解き放たれてくる。
何分間か呼吸をしているとフーッと胸の中が軽くなり、感情が吐く息と共に流れ出ていってしまう。しばらくすると、次の感情の波がドッと押し寄せてくる。周りの誰かが泣き出しているのが、聞こえてくる。叫ぶ声が聞こえる。円環呼吸をするときは、感情がわき上がってきたとき、なるべく泣いたりせずに、とにかく呼吸に意識を向けているのが大切と言われたので、ただ、その感情を感じつつ呼吸をする。感情はエネルギーであり、E＝ｍｃ2で表すことができるそうだ。呼吸をすればするほど、たくさんのエネルギーを取り入れることができ、体と心の変容に役立つそうだ。
セッションが終わりに近づくと、静かな曲が流れ始め、トレーナーの声が聞こえてきた。『吸う息で、今、いることに感謝し、吐く息でこのままの自分を受け入れて』『この人生で、ここまで、あなたを導いてきてくれた、この体を愛してあげて、そして、ありがとうと言ってあげて下さい』ただ涙が流れ、何がどうして、という具体的なことはわからないのだが、とにかく、すごく癒された自分がいた。同時にこのままの自分を受け入れるという、かねてからの自分の課題について、本当の意味で、スタート地点に立った感じがした。
当時、夫との間で行き詰まっていて、どうして良いか解決策が分からず悩んでいた。何時間寝ても疲れがとれず、精神的にも不安定な状態だった。私自身が薬剤師だったので、さまざまな漢方薬を試したが効果はよくなかった。ワークに出て、初めて呼吸が原因だったと気づいた。とても浅い呼吸か、時々は止めていたんだとわかり、何回かワークをやるにつれて呼吸がラクにでき、体もラクになっていった。現実面でも自分でどうすればよいか明確になった。意識的な呼吸を続けていくと、自分自身が変わり、現実の状況もポジティブに変化していく。というのも、現実は自分の意識のあらわれなんだから。円環呼吸はひとりでもやれるが、大勢の場でやるとパワフルに、より深く自分の中に入っていける。毎回、違う体験ができ、知るほどに奥が深くて、神秘的な、でも日常的なものである。
（薬剤師・40代・女性）