音楽療法(詳細)

現代の音楽療法は、20世紀初めにアメリカで、精神病院慰問の慈善活動として音楽が用いられたことに始まり広がった。その背景には、戦争による多くの傷病兵たちへの音楽による慰問が、全国規模で行なわれたという経緯がある。そこでは精神的に欝状態になった兵士たちに、音楽を聴くこと、歌うこと、あるいは演奏することによって心の健康を回復するための訓練が実施されたのである。そこで、精神科医や心理療法士、セラピスト、音楽家により様々な方法が本格的に研究されるようになっていった。
その後は、精神病院においてだけでなく、様々な障害を持つ子どもから高齢者にいたるまでたくさんの人々のために、集団合唱、合奏、即興演奏、動きやダンス、音楽観賞といった音楽療法が積極的に取り入れられるようになってきている。
音楽はいろいろな芸術様式の中でも最も社会性のある治療メディアであるといわれ、その効果として、社会性の促進、コミュニケーション能力の改善、運動能力の改善、自己尊厳の回復（自分らしくいられること、自分に誇りをもつことなど）、言語能力の改善、認知能力、感覚能力の改善などが期待される。実際にアメリカでは虐待にあった子どもたちや重度の障害者、脳溢血、脳の損傷のリハビリテーション、高齢者の施設などで成果を上げてきている。