ネイチャー・ワーク(詳細)

私たち人間は、太古の昔から現在まで「より安全で快適な生活」を追求するために、さまざまな努力を積み重ねてきた。地球上の生き物の中で、おそらく人間ほど弱いものはないだろう。その弱さゆえ「知性」という能力を最大限に活用し、他の生き物たちの生き方、すなわち自然に沿った生き方とは大きくかけ離れた道を選択してきたのである。
それによって私たちは確かに、ある意味の「幸福」を手に入れたのかもしれない。安全を脅かす肉食動物におびえることもなく、明日の食料の心配をすることも現在の日本においては稀であろう。天候が与える影響も、今ではめっきり少なくなった。
そして、自然を客観的に観察することにより、その力や法則を分析・解明し、さらには、それを自分たちのものとして使いこなすようになったのである。たとえば、自然界には存在しなかった化学物質・フロンなどの合成や、核エネルギーの利用などである。フロンは開発当時「夢の化学物質」と高く評価されたが、その数十年後、まさかオゾン層破壊の大変な悪者になろうとは誰も予想できなかった。核エネルギーも効率的、永久的な理想のエネルギーと考えられていたのだ。私たち人間は、そのような「幸福」を追求した結果、本来は一体であったはずの自然と、だんだん距離を開けるようになってしまった。そして「幸福」を求めて選んだはずの道が、実は違うところへと続いていることに気づきはじめている。近頃のアウトドア・ブームなどに象徴される自然回帰の欲求は、そのような時代の動きを顕著に表している。みな自然とのずれを感じとり、解消したいと願っているのだろう。また、自然環境の破壊は社会問題として大きく取り上げられるようになり、危機感をもっている人も多くなった。